ライター:月野うさ
タロットカードというと、最初にどんな事が思い浮かぶでしょうか?
きっと多くの人の持つ「タロットカード」のイメージは 「恋愛、仕事、将来などを占うカード」ではないでしょうか。
あるいは「神秘的で特別な人しか扱えないカード」かもしれません。
カードの絵柄は古典的で歴史の秘儀的なものを感じさせます。
その歴史や成り立ちって一体どんなだったのでしょうか?
ある説によるとタロットカードはトランプの祖先にあたるもので、ヨーロッパ特有の遊戯カードだったそうで、誰もがトランプのようにカードを扱い、ゲームを楽しんでいたというのです。
それがいつの間にか、占いができるカードとして発展していき、今のような神秘的要素のあるものに発展しました。
そう!タロットカードは最初から、占いの道具として誕生したのではありませんでした。
最初に始まった場所がどこなのか、時代はいつなのか?
実は、今のところはほとんど分からないのです。
けれども中世のヨーロッパで盛んに使われていたのは事実であり、イタリア、フランス、ドイツで 14 世紀後半までには定着していきました。
にもかかわらず、 最初に作られたのがいつなのか? 何処で考案されたのが最初なのか? 誰が何を意図して作ったのか? 詳しいことは全てが謎なのです!
謎・・・??
ということは西洋史の中に何か謎を解く鍵があるのでは・・・と思いながら色々な西洋史の本を読んで調べてみました。
ナント、そこには一般的に知られていないタロットの秘密が隠されていたのです。
その謎の歴史をひも解いていきましょう。
Contents
タロットの 3 種類の系統とは?
タロットの種類は何百種類とあってスタイルも様々です。
その中でタロットの歴史で最も基本となるのは以下の三系統になります。
もっとも古いタロットとされるのが「ヴィスコンティ版」
17 世紀にまとめられたものが「マルセイユ版」
20 世紀にまとめられたものが「ウェイト版」
謎が多い中、なかなかしっかりとした歴史があったのにはちょっと驚きです。
それでは、この 3 系統に分かれているタロットカードそれぞれはどのように成り立っていったのでしょうか?
上流階級の権力を示すためのヴィスコンティ版
古典派タロットとされるヴィスコンティ版には札番号やタイトル表記はありません。
上流階級の絵解きゲームやおまじないの札として使われたりしたとも言われています。
当時の庶民には教会の絵画すら見ることさえできないそんな時代でした。
庶民の間で広がったマルセイユ版
木版画で量産されたマルセイユ版は札番号、タイトルが入りカードがセットになりました。
この頃から庶民にいきわたり、占いに用いられるようになったと言われています。
タロットブームをもたらしたウェイト版
1090 年にアーサー・エドワード・ウェイトは 78 枚すべてが絵札のウェイト版タロットを刊行しました。
現在のタロットの大多数がこの系統に属します。
タロットはこのようにして人々の暮らしと共に変化していきました。
では、そのカード達はそれぞれどんな時代背景を表していたのでしょうか?
西洋文化史から、大アルカナの由来を探ってみたいと思います。
大アルカナの歴史的背景
0.愚者―The Fool―中世ヨーロッパで彼は「宮廷道化師」と言われていて、宮廷の中で唯一、どの階級にも属していませんでした。
1.魔術師―The Magician―中世のお祭りの道化師であった魔術師は不思議な力を持っているとされ、この時代のスター的存在でもあったそうです。 裏の顔は錬金術師であったとも言われています。
2.女教皇―The High Priestess―女教皇が女神イシスであることを象徴しているとも考えられており、中世の伝説の女教皇ヨハンナがモデルになったとも言われています。
3.女帝―The Empress―大地や海に例えられる女性を象徴する女帝 は、母親の偉大さを伝え、多産と豊穣のシンボルです。
4.皇帝―The Emperor―歴史的に天下を治め、国を統一した皇帝は男性的エネルギーの象徴で父親を表していると言われています。
5.教皇―The Pope―このカードはローマ法王がモデルで、一説によるとヨーロッパで教会の権力が最高に達した時の実在の教皇、ボニファティウス 8 世とも言われています。
6.恋人―The Lovers―カードに描かれたキューピットが目隠しして矢 を打つのは、中世の宮廷で流行していた「宮廷風恋愛」が一種の恋愛ゲームであったことのようです。
7.戦車―The Chariot―描かれた馬車は古代の騎馬民族ヒッタイト人の移動手段に使われ、最強の武器でもあった為、これを制する者は地上を制するとも言われていました。
8.正義―Justice―モデルはギリシャ神話の女神テミスで法の女神と言われており、法は中立で平等で、良い事も悪い事もそれぞれ原因に基づいて起こっている「因果応報」と伝えているようです。
9.隠者―The Hermit―「老人」「知恵」を象徴し、俗世を生き抜く為にこれまでの経験で得た知恵を使って目標を達成するといった事を表しています。
10.運命の輪―The Wheel of Fortune―タロットが出来た頃のヨー ロッパは戦乱続き。この激動の時代に誰もが左右された跡がこのカードに残っており「車輪」はホロスコープで、運命を訴えかけます。
11.力―Strength―ギリシャ神話でライオンを倒した勇者ヘラクレスのように苦痛や逆境に耐える精神力、辛いことによく耐え忍ぶことを表します。
12.吊るされた男―The Hanged Man―キリスト教の世界では、イ エス・キリストの処刑を表し耐えがたい苦痛をこのカードに込めたとされています。
13.死神―Death―ペストや天然痘が流行した中世のヨーロッパで、身分 に関係なく「死」がもたらされ人々を恐怖のどん底に陥れた時代の跡がカードに残されています。
14.節制―Temperance-中世ヨーロッパに発達した騎士道の精神や陰 ながら尽くすといった献身愛の物語が吟遊詩人により歌い継がれた背景があり ます。
15.悪魔―The Devil―人を地獄に突き落とす地獄の大魔王サタン。 描かれた「悪魔」はペストやマラリアなどの感染症が、人間に対する神からの 罰か、悪霊や悪魔の仕業だと考えられていたそうです。
16.塔―The Tower―旧約聖書によると、知恵を身に着けた人間たちが神に近づこうとしてバベルの塔を建てようとしたところ、天罰が下り彼らの言語をバラバラにして各地に離散させたというお話が残っています。
17.星―The Star―文明を持たない古代人にとって、星の動きは生活にとって日常不可欠なものであり、輝く星は将来への見通しの象徴であり、そこ から占星術が成立したとされています。
18.月―The Moon―古代より夜の太陽と呼ばれ、太陽の光を浴びて輝く月は陰の象徴。星とともに天体観測や占星術にとって重要なものでした。
19.太陽―The Sun―太陽の光が幸運・生命力の象徴とされ、ローマ神 話の太陽神アポロン、太陽神ヘリオスが崇められていました。古典系のタロットには天空を駆け巡る太陽神のイメージが見受けられます。
20.審判―Judgement―新約聖書の「ヨハネ黙示録」は、人類の滅亡と復活の物語。一度は死んだキリスト教徒が復活し永遠の命を授かるという場面です。ここではキリスト教徒が天国へ、異教徒が地獄へという「最後の審判」 も下されています。
21.世界―The World―キリスト教以外のすべての宗教を象徴し、この世におけるありとあらゆるものが一体化したことを表現しています。
小アルカナの起源
小アルカナは大アカルナとは別に成り立ち、ある時期にどこかで結びつけられ たという説はありますが真相は定かではありません。
特徴として、日常生活の 様子を具体的に絵柄で表現しています。
小アカルナの構成はトランプとそっくりであることから、遊戯カードであったのは間違いなさそうなんですが、トランプの方が古くからあったようで、タロ ットカードとしては1300~1400年代のヨーロッパで大アカルナと合体したと考えられています。
小アルカナの56枚の絵柄は、「ワンド(棒)」「ソード(剣)」「カップ(聖 杯)」「ペンタクルス(金貨)」の 4 種類で成り立っています。
そして、それぞれ 1~10 までの数字カードと「ペイジ」「ナイト」「クィー ン」「キング」の 14 枚で構成されています。
大アルカナと小アルカナは、一説によると別々に成立し、ある時期に一緒に成立したものとされていますが、その真相は解明されていません。
ですが、カードゲームとして親しまれていた歴史から、この4 種類の絵柄と数字カードで成り立つこの小アルカナは、実はトランプと同じなのではないかと考えられています。
トランプはすでに 14 世紀にはこのような絵柄であったとされていて、そのすぐ後にタロットが歴史上に姿をあらわしたことを考えれば、小アルカナとトランプは同じものであったと考えてもおかしくないかもしれません。
それぞれの絵柄はこのように中世ヨーロッパの市民たちを表していました。
「棒」:農民と労働者(トランプのクローバー)
「剣」:貴族と戦士(トランプのスペード)
「杯」:僧侶と聖職者(トランプのハート)
「貨幣」:商人(トランプのダイヤ)
そして、中世ヨーロッパのトップに立つ王や女王、それに仕える騎士と小姓たちは特別な存在としてカードに表されていきました。
「王」のカードは「キング」、「女王」のカードは「クイーン」、「騎士」のカード は「ナイト」、「小姓」のカードは「ペイジ」と呼ばれていました。
このうち、「王」がトランプの「K」、「女王」が「Q」、「騎士」が「J」となっていったことはカンタンに想像できるでしょう。
(参考)井上教子『タロットの歴史 西洋文化史から図像を読み解く』(山川出版社、2014 年)
おわりに
タロットカードは人間のさまざまな思いが込められて現在の形へと変わっていきました。
今も謎の部分も多いからこそ、絵柄からのメッセージはとても神秘的で、中世ヨーロッパの人々が、実際になにを食べて、どんなところに住み、 どんな仕事をし、どのような恋をして、結婚をし、家庭をつくり、何におびえ、何に苦しみ、何に笑っていたのかを想像することができます。
タロットカードは西洋だけでなく、地球上のいろいろな文化の影響を受けて常に私たちの日常生活の傍らにあったのだと、なんだかタイムスリップしたような感覚になりました。
ぜひ、タロットカードを手に取り歴史を感じていただけたら嬉しいです。
まとめ
最も基本となる3系統はもっとも古いとされる「ヴィスコンティ版」
17世紀にまとめられた「マルセイユ版」
20世紀にまとめられた「ウェイト版」
1-1.上流階級の権力を示すための「ヴィスコンティ版」
絵解きゲームやおまじないの札であったともいわれています。
1-2.庶民の間で量産された「マルセイユ版」
木版画で量産が可能になったことでカードがセットになり、この頃から占いに用いられるようになったといわれています。
1-3.タロットブームをもたらした「ウェイト版」
1090 年にアーサー・エドワード・ウェイトが刊行した 78 枚すべてが絵札のウェイト版に現在のタロットの大多数が属します。
大アルカナの絵柄は歴史的背景をあらわし、神秘的な世界から時代の闇をも表現されています。
22枚のカードは、宮廷の様子、神話の神々、庶民 の生活、宗教などが描かれており、中世ヨーロッパの様子がうかがえま す。
小アルカナの56枚の絵柄は、「ワンド(棒)」「ソード(剣)」「カップ (聖杯)」「ペンタクルス(金貨)」の 4 種類で成り立っています。
そして、それぞれ 1~10 までの数字カードと、「ペイジ」「ナイト」「ク ィーン」「キング」の 14 枚で構成されているのが、トランプとそっくりで あることから、遊戯カードだったようで、 タロットカードとしては、1300~1400 年代のヨーロッパで大アルカナ と小アルカナが合体したと考えられています。
それぞれの絵柄はこのように中世ヨーロッパの市民たちを表していました。
「棒」:農民と労働者(トランプのクローバー)
「剣」:貴族と戦士(トランプのスペード)
「杯」:僧侶と聖職者(トランプのハート)
「貨幣」:商人(トランプのダイヤ)